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病院や社員食堂と違って、なかなか中が見えない施設なだけに高齢者介護施設で働く栄養士は、どのような仕事をするのかと知らない方も多いのではないかと思います。高齢者介護施設での栄養士の仕事を一言で表すと、施設を利用している高齢者の健康を栄養面から支える仕事となります。具体的にはどのような仕事内容になるのかなど、ここでは、高齢者介護施設で働く栄養士について掘り下げてみたいと思います。
まず前提として、高齢者の健康を第一に考える、というのが仕事です。
栄養バランスに富んだ献立の作成や提供する食事の工夫といったことが、主になるでしょう。
特に高齢者福祉施設などでは、年齢の違いや身体機能の状態の違いがあるなど様々な方がいらっしゃるため、1人ずつの各個に合わせた栄養価計算(栄養ケア)や、誤飲・つまり等を防ぐように安全な食事(食材の形状・硬さの調整)の提供も必要となります。
ちなみに同施設における栄養士の仕事は、以前は食事を提供することが中心でしたが、現在では上記のように栄養ケア業務も行います。介護施設における栄養士の仕事は、介護報酬に基づいて実施内容が定められている側面があるため、介護報酬に関連する栄養ケアの内容について、以下にその一部を掲載していますので参考にしてみてください。
“低栄養状態の入所者に対して、管理栄養士が栄養計画作成、栄養食事相談等の栄養改善サービスを行った場合に加算。”
引用元:日本栄養士会「平成27(2015)年度改定 介護報酬について」
https://www.dietitian.or.jp/data/nursing-reward/h27/
また、栄養マネジメント・ケア業務が栄養士の役割となったのは、引用記載にもあります通り、栄養マネジメント加算が報酬として得られるようになったことと、2005年介護保険制度改革で介護保険施設における「栄養ケア・マネジメント」が導入されたという背景があるからです。
栄養サービスを提供する対象となる相手は、高齢者介護施設やデイサービス施設の利用者(高齢者)となります。
年齢や身体機能の状態が違う方、例えば日常生活は問題ないものの時として介護が必要だったり、またその逆だったりと様々な状態の方がいらっしゃいます。そのため、栄養管理や食事の提供には個別の対応が必要となります。
栄養士が勤める高齢者介護施設としては、
などが挙げられます。
基本的に食事を提供することが中心となるため、施設の厨房内が主な職場となります。
業務内容としては、食材の発注から調理までを担当し、入所者個々の状態に合わせて食事の提供を行います。
食材の発注は、一般的に業者に発注してから施設内の厨房で作ることもありますが、なかにはスタッフの人数や調理経験の多少を問わずにすぐに提供できるように、管理栄養士が作った献立による完全調理済みの食材を仕入れているところもあるようです。
個々の状態に合わせた食事については、例えば、噛む力が弱い方にはスプーンでも簡単につぶせるソフト食、流動食や嚥下食といったように食べやすいような食事を提供します。また、一般的に高齢者の方は食が細くなる傾向にありますので、季節の旬の食材を使用する等の工夫で、食事に飽きさせずに食欲を掻き立てるような、イベントに合わせた献立を用意することもあるようです。
さらに、利用者がどのように食事をしているのかという「ミールラウンド」を行うことも。
食事の様子をみて、しっかりと噛めているか、飲み込めているのかを観察し次回の食事に生かします。
ちなみに「ミールラウンド」の重要性については、以下を参考にしてください。
“多くの専門職から、介護職員との連携を築き上げるためには、基礎的な研修に加えて、介護職員が入所者への日々のケアに適用して目に見える効果が得られるよう、食事観察(ミールラウンド)による摂食嚥下機能の評価や口腔ケアの実施指導に取り組むことが重要とのコメントが聞かれた。”
引用元:厚生労働省「高齢者の口腔と摂食嚥下の機能維持・向上 のための取組」
https://www.mhlw.go.jp/iken/after-service-vol25/dl/after-service-vol25_houkoku.pdf
高齢者介護施設では、高齢者の健康を維持するために、様々な専門家との連携が不可欠です。
そのため、医師や看護師、介護福祉士、理学療法士、ケアマネージャー、調理師といった方々と一緒に働くことになります。
高齢者介護施設で働く場合の栄養士のお給料や待遇にはどのようなものがあるのでしょうか。インターネットに掲載されている求人情報をもとに紹介いたします。
2019年7月現在、求人ボックスやIndeed (インディード)に掲載されている情報を参考にすると、正社員では平均して月給23~28万、契約社員が月給25~35万、パート・アルバイトは1,500円からというところが一般的な水準として確認できました。
また勤務先によっては、経験・能力に応じて増減するところもありましたので、希望する施設の求人情報を確認しておきましょう。
一般的な職業と同じく、正社員だと採用されてから6ヶ月後に有給休暇が10日間取得できるようになります。
有給休暇については取得できるようですが、土日祭日や、特に年末年始はおせち料理などの行事食を作ることがあるなど、時期やタイミングによっては休むことが難しい時期もあるようです。但し、シフト制を採用している施設も多いので、調整次第で休暇を取得できるでしょう。事前に確認しておくと安心ですね。
求人情報を見ると「残業手当」「社会保険完備」「交通費支給」「産休育休制度」「マイカー通勤」といった、従業員が働きやすい条件のものも見られました。
高齢者介護施設で栄養士が働く場合は、栄養学の知識のほかに、様々な身体の状態に合った献立を作成できるスキルと調理技術が必要になります。また、栄養ケア・マネジメントについての深い理解、ミールラウンドの知識も必要です。
また、ミールラウンド時には利用者と触れ合うこともありますし、各専門家と連携してもサポートも必要となりますから、適切かつ上手なヒアリング行為を含む高いコミュニケーション能力も求められます。
社員食堂などと違い高齢社施設では、嗜好の違いのほかに個々の体の状態に合わせた食事を提供することが最たる課題です。施設利用者の栄養状態や健康状態などから判断し、一人ひとりに合うオーダーメードの食事を提供します。
昨今の社員食堂は栄養バランスこそ考えてはいるものの、「カフェテリア」「ビュッフェ」形式の場合も多く、利用者も自分の好きなものを選んで食べることができます。その点から、高齢者介護施設とは食事を提供するスタイルが違うことが大きな点ではないでしょうか。
食を通じて高齢者に寄り添い、健やかな毎日を過ごせるようにサポートすることがやりがいにつながっていくでしょう。また、利用者と触れ合うことも多いでしょうから、ダイレクトに食事の感想が聞けるのもポイントです。
加えて各専門家と連携しますから知識や技術も身につきますので、栄養士としてのキャリアアップを目指しているという方には適した職場だと思います。