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児童養護施設の栄養士が担うのは、社会的にとても大きな意義のある仕事です。公立の児童養護施設の民間委託化が進んだ昨今では、児童養護施設の栄養士は私立や自治体の外郭団体となった社会福祉法人が運営する施設での採用募集が中心となりました。
児童養護施設の栄養士の仕事内容や必要なスキルについて確認していきましょう。
児童養護施設は児童福祉施設の一つで、児童福祉法に定められた生活環境の上で養護が必要とされる児童が入所し、また退所後も相談や自立支援ができることを目的とした施設を指します。主に、幼少期から親御さんがいない子どもや、家庭内暴力などを受けた満18歳未満の子どもたちが養護を受けて生活する施設です。
児童福祉施設は、児童養護施設の他に「助産施設」「乳児院」「母子生活支援施設」「保育所」「幼保連携型認定こども園」「児童厚生施設」「障害児入所施設」「児童発達支援センター」「児童自立支援施設」「児童家庭支援センター」などがあります。
施設への入所は、児童相談所、福祉事務所、自治体が決定をするため、希望申請に基づいて入所できる施設ではないことを理解しておきましょう。
児童養護施設では、児童福祉法の職員配置基準※1に基づいて、職員を配置しています。
このなかで、栄養士としての役割を発揮するシーンは、やはり食育に関してとなります。
入所している児童の成長や発達に応じて、日々の食生活の管理に基づき食育を進め、施設退所後も地域の社会で安定して自立した生活が営めるよう、入所中から継続的に栄養および食生活の支援に努める役割を担います。
2005年に施行された食育基本法では、家庭や学校保育所等における食育の推進が謳われ、児童養護施設においても子どもの成長や発達において、食育の観点は欠かせない要素とされています。社団法人日本栄養士会全国福祉栄養士協議会でも、調査のうえで、児童養護施設における「食育計画」「食に関する内容がある自立支援計画」の重要性を確認しています。
同法人の提供する「食生活自立支援マニュアル」※2では、児童養護施設における食育の概念を、次の3つの要素を策定実施するなかで食育の推進を図るものとして定義しています。
施設の食育推進によって、入所している児童が心身ともに健康になり、生活リズムの整備や自立した食生活への理解を深めるといった事柄を備えることを目的として、栄養士を含む施設の職員全員が認識をともにすることが必要とされています。
栄養士の仕事は、大きく次の内容に分かれます。
小さな施設では栄養士と調理員を兼ねるケースも多く、専任の栄養士業務だけに留まらないこともあるようです。
また、仕事量を計る目安としては、朝昼夜で各何食を用意する必要があるかとなります。
以下では、児童養護施設での栄養士の仕事について、解説していきます。
栄養面やメニューの種類を考慮しつつ献立を考案。考案した献立は、献立表として厨房用と利用者用に2つの様式を用意します。
厨房用の献立表には、料理名や材料名、1人分の分量、朝・昼・夕の区別などを記載します。
利用者用の献立表には、具体的なメニューの内容、提供する月・日・曜日・朝昼夕の区別、総エネルギー量、栄養状況(炭水化物、たんぱく質、脂質)、塩分量などを記載します。利用者にとって献立表の配布は、とても楽しみなことのひとつです。スタッフ皆で協力して、利用者が喜んだりワクワクしたりするような献立表を作ることが大切です。
毎回提供する食事について、栄養計算をしっかりと行うことは栄養士の基本業務です。むしろ、栄養バランスから逆算して、多くの食材で児童たちに飽きのこない献立を考えていくことができるのは栄養士だからこそです。
具体的には、それぞれの食事における総エネルギー量、ビタミン・ミネラルの種類と量、タンパク質の量、脂質の量、食物繊維の量など。これら全てを数値で管理することにより、特定の栄養素に偏りのないバランスの取れた献立を提供できるようになります。
栄養計算に基づいた献立を考えたら、実際に献立を実現するための食材を発注しなければなりません。栄養士自身が発注することもあれば、スタッフに発注業務を一任することもあります。
食材の発注に際しては、利用者の人数や必要な食事の数などに応じ、過不足なく計算することが大切。常に在庫を確認しておくことも、発注業務に付随する大切な仕事です。
なお生鮮食品は当日の使い切り分だけを発注し、在庫を残さないようにします。米や味噌、調味料など毎回使用するものは、事前に在庫量を決めて、月に数回など定期的に発注するようにします。
発注したものと納品されたものとの間に乖離がないか、食材そのものに問題がないか、ということなども、栄養士がしっかりと確認します。また、その後の食材の保管や管理も大変重要な仕事です。
できたての料理をスムーズに提供できるよう、事前に可能な限りの仕込みをしておきます。仕込みとは、最終的な調理をする一歩手前の段階まで加工しておくこと。フライを提供する予定であれば、油に入れる直前までの状態にしておくことを仕込みと言います。温野菜を提供する予定であれば、温める直前の形にカットしておくことを仕込みと言います。
仕込みから実際の調理までの間にタイムラグが生じるため、安全な食事を提供するためには、季節などに応じて仕込みの範囲を変える必要があります。これら安全性を考慮しつつ仕込みを行うことも、栄養士の大切な仕事です。
給食やおやつを提供する直前に、仕込んでおいた食材を使って実際に調理をします。栄養士が調理を行うこともあれば、調理師や補助スタッフが調理を行うこともあります。
温かいものを温かいうちに、冷たいものを冷たいうちに食べてもらえるよう、提供時間から逆算して計画的に調理していくことが大切です。
食事の時間がやってきたら、遅滞なく給食を配膳します。食事を一日の最大の楽しみにしている児童も多くいますので、温かいものを温かいうちに、冷たいものを冷たいうちに配膳できるよう、スタッフとともに迅速に動きます。
食事が終わったら、食器や廃棄物を引き下げて洗浄・廃棄などの作業を行います。基本的には厨房スタッフの仕事になりますが、栄養士は厨房の安全管理に責任がある以上、現場で監督をしたり、一緒に作業をしたりすることもあります。
極めて小規模な施設でない限り、厨房では、栄養士以外にも数名のスタッフが働いています。よって、予定している献立をスムーズかつ安全に提供するためには、厨房スタッフたちとの意志共有が必要です。
厨房スタッフとの意志共有のため、栄養士みずからが率先してスタッフとミーティングを実施。繰り返しミーティングを行うことで、調理の段取りや安全管理などを共有します。各児童の食物アレルギーや嗜好などの情報も、厨房スタッフたちと共有しておくことが大切です。
食事の最終的な目的は、児童の健康維持に貢献することであり、安全性が保証されていないものを提供するようなことがあってはなりません。
安全な食事を提供するために大事なことは、第一に衛生管理です。集団食中毒などを防ぐため、専門知識を持った栄養士は率先して厨房環境の衛生管理を徹底しなければなりません。
また、調理のプロセス・方法を厨房スタッフ全員で共有することも大切です。安全な食事を提供するためには、栄養士は責任を持って、厨房における管理監督やスタッフへの教育、指導などを行わなければなりません。
食事を食べてもらう相手は児童から少年・少女、青年に至るまで幅広く、異なる年齢層の入所者たちにとって適した栄養を摂ってもらう必要があります。
また、食事は毎日のことなので、安定的に提供できる状態でないとなりません。そのため、献立作成と食材の発注のサイクルに抜け漏れがないことが重要です。
他にも、入所者各個人ごとに違う食材の好き嫌いなど、向き合うべき課題は少なくありません。
栄養士として保育士や指導員、ケアワーカーとは違う観点で、児童たちの意思表示に対してその後の献立や調理の工夫で好き嫌いをなくしていけるように応えていく必要があります。
栄養士は、児童たちの直接的な世話というよりは、食育の分野で貢献することが仕事となります。厚生労働省※3によると、食事提供と食育の取り組みから、児童福祉施設における栄養管理を次のように公表しています。
このように栄養士は、児童養護施設の入所者の健全な発育・発達を目的に、健康・栄養状態の維持向上を体現していく食生活を提供し、栄養面から入所者本人や保護者を支援する役割を担います。
食べることは日常そのものです。
食事自体には、過度に目立つような特殊性はありませんが、児童たちの身体づくりや栄養に対する考え方の醸成に、長い時間をかけながら確実に貢献します。栄養を考慮した食事を提供していく仕事は、継続的に行うことで人の人生基盤をつくっていくことにつながります。
そのための環境づくりや、食事をする児童ひとりずつの状況を把握しながら食事の用意をしていく必要があります。
1日の中のイベントとして、大きな位置を占める食事だからこそ、安定的に食事を提供できる環境を整えなければいけません。その仕事において栄養士が大きく関わることになります。
環境づくりのうえで最も大切なポイントは、食の安全性です。給食センターや調理室の衛生環境をはじめ、食材自体の安全性なども、栄養士が率先して管理していきます。安全性が確保できればこそ、栄養面のバランスや美味しさの追求、保護者に対する食育の啓蒙活動などの環境づくりを意識していくことができるようになるでしょう
食物アレルギーの有無などをはじめ、安全な食事の提供のため、児童一人ひとりの状況を把握しておくことは大前提です。それに加えて、特に乳幼児については、全体的に一律で食事管理をするのではなく、児童一人ひとりの発達状況に合わせた食事管理をするのが理想です。
成人に比べて乳幼児は、個々の発達・発育に著しい差異があります。よって、年齢や月齢で食事を一律管理することは、決して好ましくありません。乳幼児のころの食習慣は、生涯の食習慣に影響を与えます。それぞれの児童に合わせた食事を用意し、「みんなと食事をすることが楽しい」と児童が思えるよう、配慮することが大切です。
児童養護施設での仕事は、杓子定規に栄養だけを満たせばいいという考え方では務まりません。
相手は児童から青年層まで幅広く、場合によっては児童にとっての家庭の味が、児童養護施設の食事の味という入所者も出てくることでしょう。そのため、心も身体も満たしていける食事の提供を心がけたいです。その他、入所者の年齢にあった栄養素を食事によって提供できているかや、各個人の好みなどに左右されずに食事ができるよう、調理方法に工夫をしたりと、相手の意思表示の本質を汲み取りメニューに反映させることも必要です。
児童養護施設は公立と私立がありますが、現在、公立の児童養護施設は自治体の福祉協議会が運営していたり業務の民間委託化が進んでいたりすることで、公務員として直接雇用となる新規募集が出る機会が少なくなっています。
そのため、児童養護施設の採用情報は、私立の各施設の公式Webサイトや、ハローワーク、有資格者向けの転職情報サイトなどをご覧いただくことをおすすめします。