児童養護施設の栄養士・管理栄養士の仕事

栄養士のお仕事大百科 » 栄養士が活躍できる人気の就職先 » 児童養護施設の栄養士・管理栄養士の仕事

児童養護施設の栄養士が担うのは、社会的にとても大きな意義のある仕事です。公立の児童養護施設の民間委託化が進んだ昨今では、児童養護施設の栄養士は私立や自治体の外郭団体となった社会福祉法人が運営する施設での採用募集が中心となりました。


児童養護施設の栄養士の仕事内容や必要なスキルについて確認していきましょう。


児童養護施設とは

児童養護施設は児童福祉施設の一つで、児童福祉法に定められた生活環境の上で養護が必要とされる児童が入所し、また退所後も相談や自立支援ができることを目的とした施設を指します。主に、幼少期から親御さんがいない子どもや、家庭内暴力などを受けた満18歳未満の子どもたちが養護を受けて生活する施設です。


児童福祉施設は、児童養護施設の他に「助産施設」「乳児院」「母子生活支援施設」「保育所」「幼保連携型認定こども園」「児童厚生施設」「障害児入所施設」「児童発達支援センター」「児童自立支援施設」「児童家庭支援センター」などがあります。


施設への入所は、児童相談所、福祉事務所、自治体が決定をするため、希望申請に基づいて入所できる施設ではないことを理解しておきましょう。


児童養護施設における職員配置と栄養士の役割

児童養護施設では、児童福祉法の職員配置基準※1に基づいて、職員を配置しています。

〇配置が必要な職員
  • ・施設長
  • ・児童指導員
  • ・保育士
  • ・嘱託医
  • ・個別対応職員
  • ・家庭支援専門相談員
  • ・栄養士
  • ・調理員
  • ・看護師
  • ・心理療法担当職員
  • ・職業指導員

※その他、措置費による加配があるケースもあります。

※1.2016年10月1日時点で、全国の施設数が603に上り、定員32,613人に対して27,288人が入所しています。


このなかで、栄養士としての役割を発揮するシーンは、やはり食育に関してとなります。


入所している児童の成長や発達に応じて、日々の食生活の管理に基づき食育を進め、施設退所後も地域の社会で安定して自立した生活が営めるよう、入所中から継続的に栄養および食生活の支援に努める役割を担います。


2005年に施行された食育基本法では、家庭や学校保育所等における食育の推進が謳われ、児童養護施設においても子どもの成長や発達において、食育の観点は欠かせない要素とされています。社団法人日本栄養士会全国福祉栄養士協議会でも、調査のうえで、児童養護施設における「食育計画」「食に関する内容がある自立支援計画」の重要性を確認しています。


同法人の提供する「食生活自立支援マニュアル」※2では、児童養護施設における食育の概念を、次の3つの要素を策定実施するなかで食育の推進を図るものとして定義しています。

  • 食育計画
  • 食育を含む自立支援計画
  • 食事提供に関する計画

施設の食育推進によって、入所している児童が心身ともに健康になり、生活リズムの整備や自立した食生活への理解を深めるといった事柄を備えることを目的として、栄養士を含む施設の職員全員が認識をともにすることが必要とされています。


※1.参照元:児童養護施設等について|厚生労働省
(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000166119.pdf)

※2.参照元:児童養護施設における「食生活の自立支援マニュアル」|社団法人日本栄養士会全国福祉栄養士協議会
(https://www.dietitian.or.jp/data/report/fukushi2011-2.pdf)


児童養護施設の栄養士の仕事内容

栄養士の仕事は、大きく次の内容に分かれます。

〇児童養護施設での栄養士の仕事
  • ・献立作成
  • ・栄養計算
  • ・発注納品作業
  • ・給食仕込み
  • ・給食とおやつの調理
  • ・配膳&洗浄
  • ・厨房スタッフへの指示指導
  • ・健康、安全、衛生管理
  • ・調理実習

※その他、措置費による加配があるケースもあります。


小さな施設では栄養士と調理員を兼ねるケースも多く、専任の栄養士業務だけに留まらないこともあるようです。
また、仕事量を計る目安としては、朝昼夜で各何食を用意する必要があるかとなります。


児童福祉施設の栄養士の仕事で気をつけたいポイント

食事を食べてもらう相手は児童から少年・少女、青年に至るまで幅広く、異なる年齢層の入所者たちにとって適した栄養を摂ってもらう必要があります。


また、食事は毎日のことなので、安定的に提供できる状態でないとなりません。そのため、献立作成と食材の発注のサイクルに抜け漏れがないことが重要です。


他にも、入所者各個人ごとに違う食材の好き嫌いなど、向き合うべき課題は少なくありません。


栄養士として保育士や指導員、ケアワーカーとは違う観点で、児童たちの意思表示に対してその後の献立や調理の工夫で好き嫌いをなくしていけるように応えていく必要があります。


栄養士は、児童たちの直接的な世話というよりは、食育の分野で貢献することが仕事となります。厚生労働省※3によると、食事提供と食育の取り組みから、児童福祉施設における栄養管理を次のように公表しています。


一人一人の子どもの発育・発達への対応

  • 乳汁の与え方の留意点
    個別対応が大切で、一人一人のお腹のリズムが保てるよう、授乳時刻、回数、量、温度に配慮が必要。

  • 離乳食の進め方の留意点
    月齢や目安量にこだわった画一的な進め方ではなく、一人一人の子どもの発育・発達状況、咀嚼や嚥下機能の発達状況、摂食行動等を考慮し、離乳食の内容(食品の種類や形態)や量を、個々にあわせて無理なく進めていくことが重要。

  • 幼児期の食事の留意点
    離乳食が完了する1歳半頃から就学前の6歳頃までの幼児期の食事は、精神面の発達及び食行動にも配慮していく必要がある。幼児期の食事に欠かせないのは、自らの食べたい気持ちを引き出し、尊重すること。手づかみ食べからスプーンやフォーク、箸を使うようになるので、食具で扱いやすい具の大きさや、味覚の発達とともに味つけの仕方にも配慮が必要。

  • 学童期の食事の留意点
    1日3回の食事や間食のリズムがもてるなど、望ましい食習慣・生活習慣 を形成し、確立できるよう配慮し、支援することが大切。この時期には、肥満ややせといった将来の健康に影響を及ぼすような健康課題についても重要。

  • 心身面の成長に伴って精神的な不安や動揺が起こりやすい時期。心の健やかな発育・発達及び健康のためには、安心感や基本的信頼感のもとに、自らが「できる」ことを増やし、達成感や満足感を味わいながら、自分への自信を高めていくことが重要。食事の提供及び食生活の支援に当たっても、このような観点からの配慮も必要。

  • 特別な配慮を含めた一人一人の子どもへの対応
    特別な配慮を必要とする子どもへの、一人一人の子どもの心身の状態等に応じた対応が重要。嘱託医、かかりつけ医等の指示や協力の下に全職員が連携・協力して適切に行う必要がある。子どもが食べている様子を観察することが大切。
    1. 体調不良の子ども
      家庭との連絡を密 にし、必要に応じて嘱託医やかかりつけ医の指導・指示に基づき食事を提供することが重要。

    2. 食物アレルギーのある子ども
      除去食を提供する際は、禁止食材の排除、調理時の混入や交差汚染、他の子どもに提供した食事の誤食などの事故を防止するための決まりごとを施設内で決めておくことが重要。

    3. 障害のある子ども
      療育機関、医療機関等の専門職の指導・指示に基づき適切な支援を行う。一人一人の子どもの心身の状態、特に咀嚼や嚥下などの摂食機能、手指等の運動機能や障害特性等の状態に応じた配慮を行っていくことが必要。

    4. 虐待を受けた子ども
      年齢にかかわらず心理的ケア等の専門的なケアを必要とする場合が多く、心の傷をいやし「衣食住の安定」といった生活環境の保障が重要。これまでの養育環境により、発育・発達段階に応じた食習慣など基本的な生活習慣が形成されていない場合も多いので、時間をかけて、その形成にも努めていく。

※3.参照元:児童福祉施設における食事の提供ガイド|厚生労働省
(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0331-10a-015.pdf)

このように栄養士は、児童養護施設の入所者の健全な発育・発達を目的に、健康・栄養状態の維持向上を体現していく食生活を提供し、栄養面から入所者本人や保護者を支援する役割を担います。


児童養護施設における栄養士の仕事の意義

食べることは日常そのものです。


食事自体には、過度に目立つような特殊性はありませんが、児童たちの身体づくりや栄養に対する考え方の醸成に、長い時間をかけながら確実に貢献します。栄養を考慮した食事を提供していく仕事は、継続的に行うことで人の人生基盤をつくっていくことにつながります。


そのための環境づくりや、食事をする児童ひとりずつの状況を把握しながら食事の用意をしていく必要があります。


児童養護施設で働く栄養士に求められる能力や資質

児童養護施設での仕事は、杓子定規に栄養だけを満たせばいいという考え方では務まりません。


相手は児童から青年層まで幅広く、場合によっては児童にとっての家庭の味が、児童養護施設の食事の味という入所者も出てくることでしょう。そのため、心も身体も満たしていける食事の提供を心がけたいです。


その他、入所者の年齢にあった栄養素を食事によって提供できているかや、各個人の好みなどに左右されずに食事ができるよう、調理方法に工夫をしたりと、相手の意思表示の本質を汲み取りメニューに反映させることも必要です。


  • 児童養護施設で働く栄養士に求められる能力や資質
    ・栄養士の資格
    ・長期的な視点で継続的な取り組みができること
    ・食事提供におけるガイドライン※4などの知識を、児童に提供する献立に反映できること
    ・入所者と適切なコミュニケーションがとれること
    ・関係する他の職員との適切なコミュニケーションがとれること
    ・入所している児童の一人ずつの性格や状況を鑑み、食事に必要な要素を仮説類推できること
    ・その他、必要に応じた対応ができる柔軟さ

※4.参照元:児童福祉施設における食事の提供ガイド|厚生労働省
(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0331-10a-015.pdf)


児童養護施設の栄養士の採用に関して気をつけたいポイント

児童養護施設は公立と私立がありますが、現在、公立の児童養護施設は自治体の福祉協議会が運営していたり業務の民間委託化が進んでいたりすることで、公務員として直接雇用となる新規募集が出る機会が少なくなっています。


そのため、児童養護施設の採用情報は、私立の各施設の公式Webサイトや、ハローワーク、有資格者向けの転職情報サイトなどをご覧いただくことをおすすめします。