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栄養士の重要な仕事のひとつにアレルギー対応があります。保育所や学校給食などで栄養士として仕事をする場合どのような対応をしていくべきなのか、そのポイントや注意点について説明していきます。
食物アレルギーによる事故を起こさないためには、栄養士による的確な判断と対応が必要になります。とくに小さなお子さんの食物アレルギー事故は場合によって重篤な症状に陥る可能性があるので、細心の注意を払わなければなりません。
アトピー性皮膚炎や花粉症を含めさまざまなアレルギー疾患の患者が増え続けていることから、2014年6月27日にアレルギー疾患対策基本法が公布され2015年に「アレルギー疾患対策基本法」が施行されました(※1)。
その後2017年3月には厚労省より「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」(※2)も告示され、国や行政だけでなく会社や保育所などの民間レベルでも、厚労省が定める指針に基づいて対応することが義務付けられています。
2018年には公益財団法人日本栄養士協会により、「食物アレルギー栄養士・管理栄養士」の認定制度がスタート。日本栄養士会による「食物アレルギー基礎知識研修」などを修了したのち認定試験を受け審査にパスすれば、食物アレルギー栄養士(給食管理分野)として活躍できます。食物アレルギー管理栄養士はさらに栄養指導に関する認定研修を受講後、認定審査を受けます(※3)。
医療機関だけでなく、特定給食施設や教育機関などで働く栄養士にも食物アレルギーに関する正しい知識と的確な対応ができる専門性が求められるようになりました。例えば食物アレルギーによるアナフィラキシーを起こしてしまった場合、早期に適切な対応をしないと命に関ります。もっとも注意が必要なのは鶏卵です(※4)。
家庭の場合は原因食物を完全に排除するのではなく、医師の指導を受けながら子どもにアレルギー反応が出るか出ないかを観察しながら食事を提供しますが一方で、学校や保育所などの集団給食の場合は基本的に「原因食物の完全除去」か「同じ給食を提供する」かの二者択一が原則となっています。
なぜなら、保育所や小学校などでは個々のアレルゲン換算を正確に実施することが困難であるため、万が一の事故につながらないように家庭と同じ対応は行わないことになっているからです。体調や食べ合わせなどによってアレルギー反応が強くなる場合もありますし、食べた量によって重篤化を引き起こしてしまう可能性もあります。子どもを食物アレルギー事故の危険にさらさないためには「原因食物の完全除去」がもっとも低リスクな対応法なのです(※5)。
アレルギーを抱える子どもの親たちを支援する試みを続けている栄養士もいます。
例えば、認定特定非営利活動法人FaSoLabo京都(旧アレルギーネットワーク京都ぴいちゃんねっと)をベースに活躍している栄養士・伴亜紀さんは、アレルギーの原因となる食品を使わないレシピを教える料理教室を開いています(※6)。
伴さんは毎食アレルゲンにおびえながら献立に苦労している親やアレルギーに苦しむ子どもをサポートするため、特定原材料7品目(特に食物アレルギーの発症例が多い食品:卵、乳、小麦、落花生、えび、そば、かに)を使わず、白玉粉や米粉などを代用したたこ焼きやお好み焼きレシピを考案。講演と調理実演でアレルギーを持つ子どもでもみんなで一緒に食べられるメニューを教える活動を続けています。
こうした民間レベルの活動だけでなく、アレルギーを持つ人々のネットワークは地域医療が屋台骨となって広まりを見せつつあります。そこには医師や薬剤師だけでなく、アレルギーに関する専門知識を有する栄養士の存在が必要不可欠なのです。
ベースとなる考え方は2015年に施行された「アレルギー疾患対策基本法」ですが、現在、食物アレルギーや花粉症、アトピー性皮膚炎などさまざまなアレルギー疾患を持つ子どもが多いことから、保育所等の集団給食において、アレルギー児への給食対応はほとんどの園において必須業務の1つとなります。そんな中、約8年ぶりの2019年に厚生労働省が「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」を発表しました。
集団行動の中においてできることは各園によって、多少の対応の差はあるにしても、高度な知識を基に、日頃から周囲のスタッフと連携しながら、アレルギー児が決して誤食をしない仕組みをつくり、給食やおやつの時間にも最大限の注意を払い、子どもたちへ安心安全な食事を提供することが保育所で働く栄養士の最大の責務となります。
では、実際に保育園におけるアレルギー児への対応として栄養士がどのようなことを行っているのかを具体的に紹介していきましょう。(あくまでも、一例であるので、実際に行われている対応の方法は各園によって異なります。)
基本的に給食やおやつにおいて、アレルギー対応を必要とする場合には、各家庭において、アレルギーに対する医師の診断書を提出してもらう園が多いです。そして、その診断書を元に、各ご家庭に具体的に話を聞くという流れで対応することが多いでしょう。
例えば、小麦であれば、醤油などの調味料に使用されているものは大丈夫であるのか、不可であるのか、卵であれば、生は不可であるのが、加熱したものでもあれば大丈夫であるのか、どのような状態であれば食べることができるのかということを詳しく確認する必要があります。
そして、小さい子どもの場合には、どんなに気をつけていても、ついつい、お友達の食べているものに手を出してしまうということも可能性はゼロではありません。
そのため、万が一、アレルギーのでる食べ物を口にしてしまった時に、どのような対応をすべきであるのかということや、かかりつけの小児科についても確認しておくことは大切です。
集団給食におけるアレルギー児への対応は基本的には原因食物の完全除去です。そのために、使用食材が何であるか分かる献立の作成が必要です。
その献立を保護者の方に確認してもらい、どの食材を食べることができないのかを確認してもらう必要があります。調味料や加工品に使用している食品にもアレルギー反応を起こしてしまう危険性がある子どもがいる場合には、大変にはなりますが、その成分表示まで、保護者に伝えることが必要とされます。
保護者に確認をしてもらったら、理想は再度話し合いの場を持ち、チェック漏れがないかの確認が必要となります。ただし、アレルギー対応の子どもが多く、ここまでの対応が難しい場合に関しては、特に重度のアレルギー児のみ話合いの場を持つという例もありますが、他のアレルギー児においては、献立の食べることができないものの確認をしっかりと行ってもらうことは必ず徹底しましょう。
アレルギー児の情報を得ることができたら、その情報を調理スタッフはもちろん、配膳や食事介助にあたる保育士にも共有することも大切な業務です。調理時での原因食物の混入を防ぐのはもちろん、配膳時に間違ったものを配膳してしまっては大変です。そのために、スタッフ間にて、しっかりと情報を共有し、確認しておくことが求められます。
毎日、給食の献立は異なります。そのため、除去食の調理方法もその都度異なります。
そのため、毎朝、調理をスタートする前に、その日の除去食について、代替をどのように行うかということを全調理スタッフに周知させておくことも必要です。
途中の取り分けで味付けを変えるだけで、対応が可能なメニューなどに関しては、どの調理行程で取り分けをするのかなどをしっかりと事前に確認しましょう。
また、使用する調理器具についても、重度のアレルギー児が在園している場合には、専用の調理器具を用意して、使用するなどの対応が必要になります。その場合には、使用間違えを防ぐために、分かりやすいラベリングをするなどの工夫が必要です。
調理までは問題なく完了しても配膳時にトラブルが起きる場合もあります。
取り違えを防ぐためにも、調理従事者からアレルギーのクラス担当に誰の除去食であるのかを正確に声かけしながら伝えて渡すことがとても大切です。
担任が不在で、ヘルプで入っている担当者の場合などにトラブルが起きやすいです。そのため、保育に従事する人すべてにしっかりと伝達する必要があります。
そのためにも、保育士と日頃から良好なコミュニケ―ションをとり、意識し合えるように声かけすることが必要です。給食の時間において、おかわりを欲することもあります。アレルギー児がどのメニューを食べることができないのかを毎日伝えることも予防策としては大切でしょう。
毎日の給食やおやつのメニューにおいて、加工食品を使用する施設もあるでしょう。その加工食品の原材料を確認することも重要です。
また、定番で定期的に使用する加工食品に関しては、最初に原材料を確認したら、その後は確認することなく継続使用するということも多いでしょう。
しかし、加工食品も途中でリニューアルなどをして、それまでは使用されていなかった原材料が追加されて、それが原因食品であるという場合もゼロではありません。そのため、手間はかかってしまいますが、同じ加工食品を使用するという場合にも、納品の度に原因食品が含まれていないかの確認をすることを徹底しましょう。
給食の献立は1ヶ月毎に作成する施設が多いです。1ケ月の間にアレルギー対応の給食とおやつの調理現場での様子やアレルギー児の食べ残しの有無などをすべてのスタッフで共有できるとよいでしょう。
調理の手間が負担になり過ぎてないか、配膳時のトラブルはなかったか、完全除去食であっても子どもが全く食べてくれなくては献立の中身の改善の必要性もあります。改善できる点は次月に対応できるようにすることも大切です。
アレルギー対応の失敗は命に関わることにも繋がりかねませんし、そのようなことは決してあってはならないことです。アレルギーに関するミスや事故を完全に防ぐためにも、職員全員への周知はもちろん、日頃からの注意を怠らないようにお互いの声かけを忘れないように定期的に確認する必要があります。栄養士は調理室と保育室とのパイプ的役割になります。お互いが気持ちよく作業できるように立ち回れる姿勢が求められます。